子どもとメディア研究部会・学習会の報告


実践報告「私のNIE」(吉井高校・大山 仁さん)に学ぶ

2月4日(土)、教育会館にて12名の参加で標記の実践報告会が開かれました。
 この実践は、朝日新聞NIE(Newspaper in Education 学校等で新聞を学習に使うこと)と朝日新聞の「声」欄を利用したもので、国語総合の授業で月1回4クラスで実施しています。大山さんは授業で、第1面に人名がいくつ出てくるか、新聞名のイラストの絵は何か、本社の数、広告料、新聞の下はなぜギザギザになっているか、ページによって版が異なることなど、一通りページをめくり新聞に興味をもたせたり、新聞の読み方を指導します。実践の中心は「声」欄で、意識的に若者の記事を読ませて感想を書かせます。新聞社も部数減に危機感を抱いているので、うまく利用することも必要だと大山さんは考えています。生徒の感想文がいくつか紹介されましたが、生徒自身が選択した記事だけに的確な感想文でした。

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 参加者からは、①他紙との読み比べをしているか、②感想文を書くことによって力がついているか、③NIEの目的は、という質問がだされました。①について、大山さんは考えたことはあるがしていないとのこと。②については、それなりの文が書けるようになるという手ごたえはあるが、それでよいのかという疑問はあるとのこと。1ヶ所か2ヶ所うならせるようなことを書かせたいと思っているが、スキルの問題か…と語っていました。③については、世の中に関心を持って欲しい、自分でも読めるという認識を持たせたいとのことでした。
 また参加者から次のような意見・実践・感想がだされました。

  • 他紙との読み比べは、日の丸・君が代の記事がよい例だが、だまされない読者になるために大事では。宣伝を生命線としている新聞社の右旋回についても話されました。
  • テーマを決めると生徒は迎合的になるかも。漠然としたテーマのほうがよいのでは。
  • かつて新聞の4コマ漫画を見せて感想文を書かせたが、新聞はよい教材。
  • 県内の実践を探る必要がある。
  • 教育実習で新聞を利用している。
  • 生徒がどういう認識で文にするかが大事なので、決め込まないで現実と自由にコミュニケーションをするという大山さんのスタンスが大事。また継続が大事。
  • 同じ新聞を一緒に見たのは初めて。いつもとちがうめくりかたに新聞を見る距離感を感じた。記事を選ぶことを通しての交流に学んだ。
  • こうした実践の広がりが大事。
  • 読みやすさを追求するあまり、新聞が価値観を持っていない。我々もそれに慣らされている。
  • 高校生のときに新聞の成り立ちを含め色々知ることは大事。
  • 社説に署名がないのはなぜか。書いたことに責任をもつべき。
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月1回という制約がありながらも、NIEをうまく利用し、生徒に一定の書く力をつけている実践でした。この報告会を通してさらに大山さんの実践が進化することを期待します。また、こうした実践をさらに掘り起こし交流し、子どもとメディアの関係を追求できればと思います。

《文責・平井敏久:撮影・倉林順一》