近現代史ゼミ(第3期・第19回、2012年7月28日)の報告

政治とカネ① ー ロッキード事件を中心に ―

1、田中角栄は言った。「政治は力だよ。数は力、数は金だ。」
 ○この感覚は小沢一郎にも受け継がれている。
 ○海部俊樹の場合
 ○花村仁八郎『政財界パイプ役半世紀―経団連外史ー』(1990)
(経団連の創設にかかわり、専務理事、事務総長、副会長など歴任。経済界から自民党への政治献金を斡旋。財界の政治部長とよばれた。)
「現行の中選挙区制度は、カネがかかりますね。つくづく「カネに羽がはえて飛んでいく」というセリフを実感しました。…これが日本の政治の実態だとすれば、選挙民も悪い。」「いま経団連が企業や業種団体に割り当てて国民政治協会に寄付している額は年間三千万円相当です。」

2、政治家はなぜそんなに金がかかるのか
①冠婚葬祭その他
 忘年会、新年会数百回の例
※政治家の寄付行為は公選法で禁止されたのでは
 実態は深く静かに潜行。寄付がなくなることはない。
②人件費、事務所経費
 鳩山由紀夫の場合、職員38人、人件費は年間8650万円。
 もともと、有権者は国民のごく一部だった。普通選挙実現までは選挙権は財産で制限されていた。つまり選挙権は特権だった。有権者にものを頼む場合、金品なしの手ぶらで頼むわけにはいかない。そういう感覚がいまも続いているのかもしれない。だから金がかかる。
 さらに、党内、派閥内のことでのカネの使い方がたいへんだ。総裁選挙などは公選法に関係ないから、やたらカネを使う。ニッカ、サントリー(候補者2人から、または3人からカネをもらう)などという言葉もある。反対派対策にかかるカネも多い。(第二次大平内閣の時、「新自由クラブが、主流派を擁護した理由もまた、悲しいかな、金だった。」海部俊樹『政治とカネ 海部俊樹回顧録』
  中選挙区制は金がかかる、だから小選挙区制にすれば金がかからず、政策の争いになるといわれた。しかし、小選挙区制の実態はご承知の通り。

3、総理大臣の犯罪ーロッキード事件とその後―
 軍用機部門では有力だったロッキード社は旅客機では出遅れていた。そこで新開発のジェット旅客機トライスターを各国に売り込むため、各国の政治家や航空関係者に働きかけた。ちょうど日本では全日空が大型旅客機選定作業中だった。
 76年2月、米上院外交委員会の公聴会で、ロ社のトライスター売り込みのための賄賂工作が判明。ロ社の裏の代理人・児玉誉士夫から小佐野賢治(国際興業社主)やロ社の代理店・丸紅を通して当時の田中首相に5億円が渡ったとされる。三木首相は「徹底解明する」と表明。「はしゃぎすぎ」といわれ、後の「三木おろし」の動きにつながる。
 7月、東京地検特捜部は田中を逮捕、8月に起訴。83年、田中に有罪判決(控訴)。
逮捕後もトップ当選を続け、闇将軍として正解に強い影響力をもち続けた田中も85年2月、脳梗塞で倒れる。87年、控訴棄却(上告)。93年2月、田中死亡により、控訴棄却。98年、田中の秘書官・榎本の有罪確定で、田中の5億円授受を認定。

4、事件をめぐる謎
①田中角栄は狙い撃ちされたのか
 なぜ、歴代首相の中で田中だけが逮捕され、有罪判決となったのか。諸説ある。日中国交正常化を果たした田中を快く思わなかったキッシンジャーがロ事件を起こしたという説もある。中東政策と石油資本がらみだとの説もある。  一方で、賄賂側のロ社は捜査資料を入手するための取引で免責され、誰も起訴されていない。
②特捜検察は正義の勇者なのか
 昔の裁判所は裁判官と検察官が同じ高い席に座っていた。両方とも法務省管轄で、昔も今も検察が起訴したものは有罪になる確率が極めて高い。検察の「見立て」、つまり事件のストーリーが作られていて、それが押し通されることが多い。過去に幸徳秋水が処刑された大逆事件があり、最近でも厚労省の村木事件など、でっち上げや冤罪事件がある。

(まとめ・設楽 春樹)

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